こんにちは。今日は「噛み合わせ専門医」の宮崎先生が助っ人として来る日です。ブログ上でお伝えしている新潟での研修にも一緒に参加しているのです
が、難症例について力を貸してもらっています。いつもありがとう。その彼を差し置いて今日のテーマ「顎関節症」について僕が語るのは、非常におこがましい
と言いますか、なんでお前なん?って言われそうですが初歩的なことを、お伝えしていきたいと思います。
あくびをして顎が「バキッ」「コリッ」など音を立てることはないですか?そこまででなくても「ゴリゴリ」するとか。
また、音はしなくても鏡の前で大きく口を開いてみると下顎がだんだん左右のどちらかにズレるとか?
歯医者で「大きく開いてー、はい開いて―」とかよく言われる、それでも開けないんだけど、という方。
ほかにもいろんな症状が考えられますが、これらのうちのどれか、もしくはいくつかが出ている場合、顎関節症が疑われます。
顎関節症は下顎の骨の一番上にある「関節頭」と、頭蓋骨(頭の骨)の「関節窩」、それとそれらの間に挟まった軟組織(線維性の組織)である「関節
円盤」の不調和が起きて様々な症状が出るのです。上下の歯が噛む位置と、噛んだ時の上下の顎の骨の位置関係、その両方が一致してないと理想的な噛み合わせ
ではないわけです。①上下の歯はいいカンジで噛んでいるが、上下の顎骨どうしはズレている、か②上下の歯がうまく噛み合わず顎の対向関係も良くない、この
2つが多いのではないでしょうか。
上下の骨の位置関係に問題があると、その間に挟まった「関節円盤」も障害を受けます。まず、硬い物と硬い物に挟まった柔らかい組織は簡単に変形します。
変形に留まらず関節円盤自体が変位することもあります。関節円盤の前後は靭帯と筋肉が付着していますが、それらも軟組織ですから変形を起こして靭帯などは
伸びきったロープのようになり、もはや復位(もとの位置に戻る)することができなくなることもあります。顎関節症と思われるような症状が出て何年も経過す
るような方の場合も、やはり容易には元に戻りません。
若年者であり、症状が出て間もなければまだ回復が見込めるかもしれませんので、このような症状が見つかったらまず現在の自分、もしくはご自分のお
子さんがどういう状態なのかをしっかり把握しましょう。一次的に外傷によってそういった症状が出ているだけなのか、噛み合わせが良くないことが原因になっ
ているのか、正しく理解をしてください。その上で処置が必要なのか考えましょう。
時々誤解されている患者さまがいらっしゃいます。「矯正をすれば顎関節症が治るんですよね」とおっしゃる方です。これは改善することもあれば、矯
正をして顎関節症の根本原因を治しても顎関節症自体はもはや治癒しないような変化が起きている場合も考えられます。たとえば『ヘビースモーカーの方が肺が
んになり、原因であるタバコを止めれば肺がんが完治するか?初期の病気であれば完治するし、進行して転移があれば厳しくなる』のと近いのではないでしょう
か。ただし将来起こりうる悪い変化を最小限にする、という意味では矯正治療の恩恵ははかり知れません。ここから先は症例ごとに違ったニュアンスが出て来る
ので、できれば個別にご相談いただければ、もっと踏み込んだ説明をさせていただきます。
1例を提示します。顎関節症があり、不正咬合がある患者さまです。まず、TMDを改善すべくスプリントというプレートを使いました。目的は下顎の
自由度を上げて噛み合わせに左右されない顎関節の位置に戻ることを目指します。この方の場合2か月くらいスプリントのみで様子を見ました。すると顎の関節
部分の痛みや違和感は消失し改善を見ました。
その後、そのポジションで上下の歯並びを作るために矯正治療を進めました。途中顎のポジションは流動的であることを考えチェックしながら進めていく予定です。
今回示したケースは現在進行中の治療であり、今後追って御報告したいと思います。なお術前、術後の評価としては咀嚼筋の触診(10箇所)を基準に評価しています。