抜歯即時埋入の落とし穴
こんにちは。僕はインプラントを専門に治療を行っていますが、もちろん医療に100%なんてことはないわけで、うまくいかないこともあります。今日はそんなできればお見せしたくない「ちょっと成功とは言い難い」ケースをあえてご紹介いたします。
なぜか?世間でけっこう行なわれているであろう「フラップレス抜歯即時インプラント埋入」なのですが、けっこう難しい処置ですし慣れない先生が 「骨の状態を見ずに」インプラントの埋入を行なうなんてもっての他というくらい難易度が高いですから、非常にケースが限られると思います。今回お見せする 処置を行なった時すでにかなりインプラントのケースもあったため、自分にけっこう自信がありました。今思えば過信だったんだと思います。
では埋入後の写真から見ていきましょう。
抜歯する歯の周囲の歯肉をなるべく傷付けないように抜歯を行ないます。そして抜歯窩(抜歯によってできた穴)の口蓋側(内側)に埋入します。今思えばもっと低位に埋入すべきでした。唇側の隙間にこの当時はハイドロキシ・アパタイトの顆粒を入れていました。
そしてこれがファイナルセット時です。辺縁歯肉に触れる部分の形態をレス・カントゥアにしてありますので、この後歯肉は若干上ってきます。そして3年後のメインテナンス時です。
歯肉は良い状態を保っていますし一見良好なのです。が、数ミリ辺縁歯肉から上に「フィステル」と呼ばれる排膿路が出来ているのです。これはファイ ナル・セット時にはありませんでしたが、セット後数か月して出現してこれまで現状を維持しています。大きくもならず消失することもなく痛みもなく経過して おります。幸いなのが痛みがないことです。
原因を考えました。やはり抜歯即時埋入の原則である「感染がないこと」の確認が不十分であった可能性があること。埋入時に頬側に骨壁があるのかフラップを形成して確認しておらず、もしかしたら頬側の骨に裂開があったのかもしれないこと。などが考えられました。
もしそうであるならば、JIADSで習った適応症のガイドラインからも(この当時はJIADS ペリオコースやぺリオインプラント・アドバンスコースは
受講前でした)外れていると考えられます。残念ながらこの原因の特定はできませんが、今後の私の臨床において更なる知識と技術の進歩が必要であるととも
に、適応症の見極めが非常に大事であると考えさせられます。
今後はこのようなことが起きないことを念頭に、毎日の診療に従事していきたいと思います。皆様の安心のために。